8.1 最重要の勉強法!同じ問題集を繰り返す

更新日 2021年5月5日


合否を分けるのは「同じ問題集を繰り返すこと」

『勉強法』の中で最も大事なものを一つだけ選ぶとしたら、間違いなく「問題集の数を絞り、同じ問題集繰り返すこと」です。

もし他のことを全て忘れてしまったとしても、どうかこれだけは覚えて欲しいです。

このページを読んでもらえれば分かりますが、そのぐらい、これをするしないが合否を分ける大事な勉強方法になります。



東大合格者に『合格の秘訣』を聞いて回ったときも、最も多かった答えが「問題集の数を絞り、同じ問題集を繰り返す」でした。

同じ問題集を3回やった。一教科に数冊で充分。理解が浅いまま色々手を出すのが一番危険。

東大理科Ⅰ類N.Tさん



特に数学は同じ問題集を何度もやった。解き方が自分の中に定着するまで繰り返し解くのが大事。

東大文科Ⅰ類T.Tさん



あれこれ色々な問題集に手を出さないようにすることだけ気を付けた。

東大理科Ⅰ類Y.Iさん





次にアンケートの結果を見てみます。

以下は東大/京大の理系学部受験者の『勉強法』ごとの合格/不合格をまとめたものです。



同じ問題集を繰り返すより、できるだけ多くの問題集を解いた」という勉強法で合格した人はたったの11%でした。

一方で「同じ問題集の間違えた問題を3~4回繰り返し解いた」という勉強法で合格した人はなんと59%もいました。


一見よさそうにみえる「できるだけ多くの問題集を解く」という勉強法の人の合格率が圧倒的に低いのは、驚きではないでしょうか?

塾や学校の宿題を全部こなそうとして、結果的に大量の問題集をこなす人は、努力の割に成長しなかったりします。

努力しているのに成績が伸びない、という理不尽なことが起こるわけです。




この勉強法の違いから、合格した人の方が、こなした問題集の数も少ないです。


※理科は、数が少なかった生物選択の人は除き、物理/化学選択の人の平均の冊数を載せています



なお、他大の理系合格者と比較しても、東大/京大合格者はこなした問題集の数は少ないです。



もし「難関大に合格するにはたくさんの問題集をこなさなければいけない」とイメージしていたなら、その認識を変えてほしいです。

東大/京大合格者は、逆に問題集の数を絞り苦手な問題を繰り返すことで弱点を埋めて得点を伸ばす、という『工夫』をしています。

その『工夫』をマネしない手はありません。






「同じ問題集の間違えた問題だけを3~4回繰り返す」はどの大学でも効果的

ここまでを見て「東大/京大の理系はそうかもしれないが、文系や他の大学だと話が違うのでは?」という疑問が浮かぶかもしれません。

そこで他の大学や文系について『勉強法』と合否の関係を見てみます。











東大/京大の理系学部ほどははっきりとは現れませんが、文系であっても、どの大学で見ても、「同じ問題集の間違えた問題だけを3~4回繰り返して解く」という勉強法が有効であることが分かると思います。






間違えた問題を3回繰り返すのが効果的な理由

なぜ間違えた問題を3回繰り返すのが効果的であるか、を3つの観点から説明します。


間違えた問題を3回繰り返すのが効果的な理由
①ちょうどよい復習になるから

間違えた問題を3回繰り返すことが、ちょうど良い復習となって、定着しやすくなります。

以下を『忘却曲線』と言います。有名なので見たことがある人もいるかもしれません。



せっかく苦労して一度完璧に覚えても1ヵ月後には78%は忘れてしまいます。

最近の研究では、何日か間を空けて繰り返すことが記憶定着のポイントと言われています。
(『Spacing effetct』、つまり間を空ける効果、と呼ばれています)

逆にいえば、1日に何回もやっても効果は薄いということです。


とはいえ毎日3~5教科で学んだことを全て管理して、計画的に復習するのは現実的ではありません。

そこで同じ問題集を3回繰り返すことで、自然と数日空けて復習することになり、忘却曲線の理屈からしても効果的な学習となります。


なお、復習のタイミングは色んな説がありますが、2日以上は空けた方がいい、1ヶ月以内には復習した方がいい、というのは確かなようです。



間違えた問題を3回繰り返すのが効果的な理由
②自然と苦手な問題に集中できるから

勉強は「できない問題をできるようにすること」が目的です。

ですから、試験本番はできる問題からやった方がいいですが、勉強するときはできない問題を中心にやった方が効率的です。

3回繰り返す勉強法は、間違えた問題だけを繰り返すので、自然と苦手なところにより多くの時間を使うことになるので効果的です。


これはマジメに大学で研究されています。

アメリカのパデュー大学で、40個のスワヒリ語(初めて見た言語)の単語を覚える実験をしました。

覚えた方は以下二つです。

(1)全40語の単語を学習、を4回繰り返す
(2)直前のテストで間違えた単語だけを学習、を4回繰り返す

※どちらも学習の間に、全40語の小テストを挟んでいます。



1週間後の最終テストでは(1)(2)のどちらの覚え方でも平均は80点でした。

つまり定着率は同じだったわけですが、重要なのは勉強量(学習時間)です。

(2)は間違えた単語だけを読んでいたので、(1)より勉強量(学習時間)が短く済んでいます。

つまり全ての問題を学習するより、間違えた問題だけを学習した方が、定着率は同じで、時間が大幅に節約できるということです。

節約した時間の分を他の学習に回せば合格率が上がるのは当然です。


それを踏まえてこれを改めてみると納得がいくはずです。






間違えた問題を3回繰り返すのが効果的な理由
③問題を解くというアウトプット学習だから

先生の話を聞く/動画を見る/参考書を見る、などの学習を『インプット学習』と言います。

問題を解く学習を『アウトプット学習』と言います。

インプット学習だけでは定着率が低く、アウトプット学習の割合を増やすと定着率が上がることが知られています。


パデュー大学が、学生180人に協力してもらい、「文章を読んで覚える学習法」と「テスト形式での学習法」と、1週間後にどちらが内容をよく覚えているか、という実験をしました。

結果、同じ時間だけ勉強したとしても、テスト形式の学習の割合が多いほど、1週間後に覚えている率が高いということが分かりました。



諸説ありますがインプットとアウトプットの比率は3:7、試験直前は1:9がいいと言われています。

ですが、多くの受験生は学校の授業/塾の授業/ネット授業など、インプットの時間が多すぎて、アウトプットの時間が不足しています。

ですから3回繰り返す、という勉強法に含まれる「問題集を解きながら覚える」が、実はとても効果的ということです。

アウトプットの重要性については、別の章で詳しく紹介します。
<9.3 問題を解きながら覚えると効率が20%アップ>





問題集を3回繰り返す:具体的な手順

同じ問題集の間違えた問題だけを3回繰り返します。

間違えた問題だけを3回繰り返すので、2巡目、3巡目になるにつれて問題数が減っていきます。

そして繰り返していくほどに、あなたにとって苦手な問題だけを集めた問題集、つまりあなたの成績を最短で上げるための問題集へと変わっていきます。




<1巡目 テストと思って解く>
まずテストだと思って真剣に問題を解きます。


<1巡目で正解した場合>
初見で正解したら基本的にその問題は二度とやりません。

もし正解した問題にも不安があれば、チェックを入れておき、2巡目で確認だけします。


<1巡目で不正解だった場合>
間違えたり、解けなかったら解説を見ます。

数学/英語/国語/物理で5分考えて解法が浮かばない、社会/化学/生物などの知識問題は30秒かけて思い出せないならすぐに解説を見ます。

知らない解法を0から生みだすのは無理ですし、知らない知識はどうしようもありません。

ただし、解説を見るときに「どこで間違えたか」、「どの知識が足りなかったか」、を自分の言葉で解説に徹底的に書き込みます。

これが非常に大事です。

もし解説を読んでも分からなかったら、教科書/参考書の関連する場所を2, 3ページ読み、それでも分からなかったら学校/塾の先生や友達に聞きます。ネットに解法があることもあるので調べてみます。



<2巡目>
2巡目は、1巡目で間違えた問題だけをやります。


<3巡目>
英語や国語は3巡は必要なく、2巡目だけでいいと思います。

英語や国語は、2巡目になると、内容を覚えてしまっているかもしれませんが、その分、文章構造の掴み方や自分の解答の導き方が解説とどう違うかを意識しながら読むと力がつきます。

数学、理科、社会は2巡目で間違えた問題だけは、3巡目をやります。

3巡目でも間違えた問題は、自分が成長できるポイントを凝縮した問題のリストになります。

付箋を貼っておき、試験の前に重点的に見直すことでもっとも苦手な問題をカバーできます。



本コラムのまとめ

  • たくさんの問題集に手を出すのではなく、同じ問題集を、間違えた問題に限り3回繰り返す。
  • 東大/京大受験者でこれを実践した人の合格率は高く、合格の秘訣として挙げる人も多い。
  • 解きながら覚えるアウトプット学習であること、苦手な問題に集中できること、忘却曲線の考え方からしても、非常に効果的な勉強法。